DLCコーティングの標準化で成長戦略の推進を

DLCの物性制御のコンセプトDLCの物性制御のコンセプト(提供:ナノテック) ニューダイヤモンドフォーラムが5月11日、「平成23年定時会員総会」を開催した。同フォーラムは1985年に設立、CVDダイヤモンドを中心とするニューダイヤモンドの技術開発、ならびに新用途分野開発に向けて、産学官の研究者・技術者の情報交換・相互研鑽を通して、ニューダイヤモンドの発展を追求してきた。さらに近年は、ダイヤモンド、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、フラーレン、カーボンナノチューブなどのカーボン系高機能材料技術の実用化推進をめざし、受託調査研究などを実施、わが国産業の発展に寄与することも目的としている。

 同フォーラムでは、 以前当ホームページで紹介したとおり、平成21年度より受託事業として、「ダイヤモンドライクカーボン膜および評価技術に関する標準化」プロジェクトを推進している。DLCはカーボン系材料の中でも、金型、工具から自動車部品まで、近年特に産業化が進んでいる材料であり、カーボン系材料でわが国産業の発展に寄与する使命を掲げる同フォーラムとしても、その標準化による市場拡大は、注力しているプロジェクトの一つと言えよう。

 ところで、総会当日は未踏技術協会理事長の木村茂行氏による「グリーンテクノロジー政策と学術の寄与」と題する特別講演が行われた。総合科学技術会議の策定した第4基基本計画の中で研究開発の中核に位置づけているグリーン・イノベーションとライフ・イノベーションの概要を説明、学術の成果活用でこうした社会要請に応える道と、本来の学術活動に専念する道をともに模索するアプローチを示唆した。

 環境大国を目指すグリーン・イノベーション政策と、健康大国を目指すライフ・イノベーション政策。

 グリーン・イノベーション政策では、その柱である“太陽光発電の飛躍的な性能向上と低コスト化”に。シリコンと同等の半導体特性および共有結合を主体とした構造を有する炭素材料、中でも耐久性が高く低コスト化が可能なDLCの適用が検討されている。

 また、ライフ・イノベーション政策では、医療機器、特に人体に埋め込まれる人工関節やカテーテルのステント材料など、耐久性と生体適合性が必要とされる用途でDLCの適用研究が進んでいる。

 DLCが幅広い用途で適用されているのは、ダイヤモンドからグラファイト、ポリマーライクまで広範な物性を発現できるという点が大きいが、反面、その広範な特性を示すコーティングをDLCと一括りにしていることで、ユーザーが適用する場合に混乱を招き、市場の拡大を阻害しているという一面もある。

 DLCを早くから手がけるナノテックでは、DLC膜の構造制御や元素のドーピングを行うことでダイヤモンドからグラファイト、水素を含んだポリマーライクカーボンまで、各種用途に合わせた機能性を付与するICF(真性カーボン膜)を提唱、適用を進めているが、同社のようにDLCの分類を進めたり、また評価手法の確立を目指す標準化作業によって、DLCの使い勝手は向上し、適用用途は広がっていくであろう。

 東日本大震災の後、総合科学技術会議ではグリーン・イノベーションとライフ・イノベーションの二大戦略に並んで、「復興・再生ならびに災害からの安全性の向上への対応」を成長戦略に加えた。ここにおいてもDLCの活躍の可能性は多々考えられよう。DLCのいち早い標準化作業によって、わが国の成長戦略推進の一助となることに期待したい。