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トライボコーティング技術研究会、平成28年度第1回研究会・総会を開催

 トライボコーティング技術研究会は6月3日、埼玉県和光市の理化学研究所 和光本所で「平成28年度 第1回研究会及び総会」を開催した。

 当日は大森 整会長(理化学研究所 主任研究員)の開会挨拶に続いて、以下のとおり2件の講演がなされた。

講演する滝沢氏講演する滝沢氏 「ハウザーのPVD・PACVDコーティング技術」滝沢正明氏(IHIハウザーテクノコーティングB.V.)…同社のPVD(物理蒸着)技術とPACVD(プラズマアシストCVD(化学蒸着))技術について概説。磁場を最適化し面内均一のアークスポットが可能な独自アークイオンプレーティング手法「CARC+」ではドロップレット生成を抑えられることや、ターゲット使用率が高いこと、高い成膜レートを実現できることといった特徴を述べた。同手法でta-C膜を成膜した切削工具で加工寿命を大幅に延長したデータなどを示したほか、一般的にCrN膜が10~20年の耐久性(耐摩耗性)を有しta-C膜が初期のフリクション低減の機能を担うエンジン部品の例に対して、同手法ではta-Cを厚膜成膜することで単層膜だけで長期耐久性を実現する試みを紹介した。一方、PACVDのプラズマ源としてマイクロ波を活用した「マイクロ波PACVD」によるDLC成膜で、5μm/h以上の高い成膜レートが得られたデータなどを示した。

講演する木野氏講演する木野氏 「ハーモニックドライブ®の最新技術動向」木野 学氏(ハーモニック・ドライブ・システムズ)…楕円と真円の差動を利用することで、小型・軽量・高効率で高精度・高減速比を実現する波動歯車装置「ハーモニックドライブ®」について、構成要素や作動原理を解説するとともに、各種特性を活かした産業用ロボットや天文、資源掘削、宇宙、アクチュエータ研究などの分野での適用事例を示した。また、今後の注力分野として、小型・軽量を活かした介護ロボットなど医療・介護分野や、省スペース化や高い制御性などを活かした協業軽作業ロボット分野などでの課題などについても紹介した。さらに、ハーモニックドライブ®の性能や寿命に関わる、ベアリングの転動疲労寿命やグリースの潤滑寿命の改善に関わる研究開発の必要性なども示された。

 引き続き平成28年度総会を開催、平成27年度活動報告・会計報告が行われ、平成28年度活動計画が発表された後、光量子工学研究領域・光量子技術基盤開発グループの見学が行われた。

 今回はまた、大森会長から「第9回 岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」の業績募集を開始したことが発表された。岩木賞は表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故 岩木正哉博士(理化学研究所元主任研究員、トライボコーティング技術研究会前会長)の偉業を讃えて、トライボコーティング技術研究会が提唱し、未来生産システム学協会(NPS)が、当該技術分野と関連分野での著しい業績を顕彰するもの。募集対象は表面加工、表面改質、表面分析、トライボロジー、コーティングに関わる研究・技術・開発・支援・交流・事業化などで著しい成果、業績(製品、サービス、学会発表や特許申請/登録されたものを含む)を上げた個人、法人、団体で、表彰対象は受賞業績が公表できること、NPSに参加できること、と定めている。募集締切は本年8月31日で、受賞業績は来年2月24日に開催されるシンポジウム「トライボコーティングの現状と将来」において表彰されるとともに、受賞講演が行われる予定。岩木賞に関する問い合わせ先と申請様式の請求先はNPS 表彰顕彰部門 岩木賞表彰事業部内 事務局(E-Mail:award@nps-t.info)まで。

 トライボコーティング技術研究会ではまた、岩木賞表彰費用の賛助を募集している。問い合わせ・申し込み先は、同研究会 岩木賞表彰基金(E-Mail:award@tribocoati.st)まで。

 次回第2回研究会は本年7月にドライコーティング研究会との合同技術研究会として開催される。

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