トライボコーティング研・ドライコーティング研、2017年度合同技術研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会とドライコーティング研究会は10月18日、東京都板橋区の板橋区立文化会館で、「第10回トライボコーティング・ドライコーティング合同技術研究会」を開催した。今回は、理化学研究所創立100周年を記念した理研シンポジウムの一環として、また「トライボコーティング技術研究会2017年度 第3回研究会」、「第41回マイクロファブリケーション研究の最新動向」を兼ねての開催となった。
 
 会の冒頭、開催地となった板橋区の坂本健区長は「本年、理化学研究所としては100年という節目の年と聞いている。板橋区と理研の関係は1946年に理研・板橋分所を設置、ノーベル賞を受賞した湯川秀樹氏や朝永振一郎氏らを含む大変偉大な研究者がこの地で研究をされた。昨今では、大森整氏(トライボコーティング技術研究会 会長)が2015年3月まで研究室を置いていたが、組織編制に伴い和光の本所に統合され板橋分所は閉鎖されることとなった。しかし、板橋区としては歴史ある理研・板橋分所を産業遺産として遺すべきと考え、先日文部科学省より産業遺産を保存・活用した都内初となる史跡公園を整備することが認められた。また、大森先生の研究室の一部機能を板橋区のものづくり研究開発連携センターに移し、現在においても特に板橋区と親和性の高いレンズの加工技術などでご支援いただいている。今回、理研の100周年を冠したイベントが当区で行われることを大変嬉しく思っている」と挨拶を述べた後、以下の講演が行われた。
挨拶する坂本氏挨拶する坂本氏

基調講演

「人体に優しい、紫色LEDを使った、太陽光に近い白色LEDの応用と、将来の光源」中村修二氏(カリフォルニア大学 サンタバーバラ校)…20年間在籍した日亜化学で研究を行った高輝度青色LED、白色LEDの開発、製品化までを述べた後、最近の話題として青色LEDと黄色に光る蛍光体からできている白色LEDが夜間の照明に使用されると健康障害を起こすことが指摘されていると報告。これに対して同氏らが共同創業した米SORAA社は、太陽光に近い発色をする紫色LEDを使用した白色LEDを製品化。青色LEDを使用した照明で問題となっていた睡眠障害や近眼の進行などを最小限にできる可能性があると述べた。
基調講演を行う中村氏基調講演を行う中村氏

第一部:マイクロセッション

「微細加工関連の最新研究動向」大森整氏(理化学研究所)…今年6月に韓国で行われた微細加工とグリーンテクノロジーに関する国際会議「MIRAI会議」のもようを紹介。微細ビーム加工によるマイクロストラクチャの形成、撥水表面を形成する加工事例や耐食性の改善などに関する発表があったことを報告した。また、切削・研削加工ではエッヂを研磨したナイフを医療用として応用する試みや、ELID研削によるSiCウエハの加工、加工液に水のみを使用する電気防錆加工法などの発表があったという。さらにCMPでも活発な発表があり、日本からは豊橋技術科学大学の会田英雄氏よりプラズマ加工とCMP加工を融合したプラズマ融合CMP装置を使用して、SiCやGaN、ダイヤモンド基板に対して加工レートが高く、表面粗さも良好な加工をしたトピックを紹介した。

「イオンショットテクノロジー:光学材料のナノ精度研削とステンレス系金型材のダイレクトカットへの応用」加藤照子氏(理化学研究所)…難削材の鏡面研削として適用されているELID研削を応用したイオンショットドレッシング法について解説。ELID研削システムでは、主に砥石と電極、クーラントが用いられていたが、携帯電話やコンパクトデジタルカメラのレンズなど光学素子の小径化により、金型においても小型化が進み、配線の断線や砥石と電極の衝突などの理由から電極を設置することが困難になっていた。イオンショットドレッシング法では、砥石に電極を近接させず、電解された研削液を砥石に照射することでELIDと同様の効果を得ることができる。講演では、この研削システムをステンレス系金型材のダイレクトカットに応用した研究背景や基礎的切削加工試験、専用クーラントの開発、平面および凹面切削加工試験について報告。研削ではメタルボンドのドレッシングが可能になり安定した鏡面加工が可能なこと、切削への応用ではこれまで不可能であった鉄系材料のダイヤモンド切削が可能になり、表面粗さRa2.374nmの鏡面加工を達成したと結果を述べた。

第二部:オンデマンドセッション

「微細構造を用いた光学フィルムによる光機能制御」林部和弥氏(デクセリアルズ)…微細凹凸構造により屈折率差(界面)をなくし低反射・高透過に優れた特性を実現した反射防止構造体(ARS)を用いたフィルムについて解説。講演では製造方法やシミュレーション技術により求める光学特性をナノレベルで数値化するなどの実例を示し、従来はエレクトロニクス分野で適用されることが多かったARSフィルムだが、反射防止構造体の形状制御により高帯域で高性能な反射防止特性をを実現しており自動車メーター部の視認性向上もできることから応用を図っていることが報告された。また、フィルム内部に特殊構造を持たせ、太陽からの近赤外線を効率的に跳ね返す熱線再帰フィルムを建物の窓に適用することで周辺温度上昇の抑制を実証した事例を紹介した。

「最新型ホットスタンプ・アルミ成形金型向けDLC系膜について」福井茂雄氏(日本エリコンバルザース)…ホットスタンピングの現状と適用状況について述べた後、ホットスタンピング金型向けの最新表面処理として、低圧ガス窒化とPVDコーティング、DLCコーティングの複合処理を紹介。窒化層はφ4mm深さ10mmの穴部にも浸透し、高い表面硬度と均一な硬度分布を示すという。コーティング層は、軟質Ti系被膜の上に約8μmのAlCrN系被膜を施すことで1100℃の温度域まで酸化を起こさず安定した硬度を保持しつつ耐摩耗性に優れた特性を示すという。これに磨きを加えて上層にDLCコーティングを行うことで耐溶着性を向上させる。
2017年度合同技術研究会のもよう2017年度合同技術研究会のもよう