散乱研究会、第29回散乱研究会を開催

 散乱研究会(事務局:大塚電子)は11月22日、東京都台東区のHULIC HALLで、「第29回散乱研究会」を開催した。

 光散乱法は1944年のデバイの論文を契機に高分子やコロイドの研究に応用され始め、その後1940年代後半にジムらが高分子溶液の光散乱測定を始め、高分子溶液物性の主力研究の手段となり、日本でも1960年頃から光散乱測定装置の開発が始まった。ところが、光散乱法を利用するには散乱理論の知識が不可欠で、またその測定も容易でなかったため、装置の普及はそれを専門とする大学や一部の企業の研究室に限られていた。そうした状況下で、この光散乱法を一人でも多くの人に知ってもらおうと、加藤忠哉氏(当時、三重大学教授)を中心とした世話人の熱意と、我が国の光散乱測定装置メーカーの草分けである大塚電子の支援により「散乱研究会」が1989年(平成元年)に発足、第1回研究会が東京で開催された。以降、同研究会は年1回開かれ、2016年に開催された第28回研究会までに通算139件の講演と累計3800名以上の受講者を数える。

 今回の研究会は、柴山充弘氏(東京大学)と佐藤尚弘氏(大阪大学)、岩井俊昭氏(東京農工大学)、木村康之氏(九州大学)を世話人として、大塚電子の光散乱製品の紹介を含めて、以下のとおり開催された。午前は基礎講座、午後は話題提供や研究例を含む講演会という形式として開催。午前の部では、静的光散乱法に関する基礎講座を開講して動的・電気泳動光散乱法では得られない有用な情報について初心者にも分かりやすく解説、午後の部では広範な分野の講師による光散乱法を活用した最新の研究や実際の応用例が紹介された。

・光散乱基礎講座「静的光散乱法」佐藤尚弘氏(大阪大学)…動的光散乱と静的光散乱を組み合わせて流体力学的半径とモル質量の両方が得られることで、ナノ粒子の情報量が格段に増えることを合成両新媒性高分子やDNAといった応用例をまじえて解説した。

・「二重らせん多糖類キサンタンの熱変性・再性に伴う構造変化」松田靖弘氏(静岡大学…キサンタンは二重らせん構造を持ち、⾷品等の増粘剤として使われている。キサンタンのらせんがほぐれ(変性)、巻き戻る(再性)過程の構造変化を光散乱測定などから解析した。
「光散乱を利用した高分子の結晶化と相分離挙動の追跡」斎藤 拓氏(東京農工大学)…CCDカメラを用いた光散乱測定によって、結晶性高分子の、結晶の部分融解過程や球晶成長過程、結晶化と液々相分離の同時進行、早い結晶化の評価などの事例を紹介したほか、架橋ゴムの伸張過程の構造変化などを追跡した事例を紹介した。

・「バイオマテリアル応用を目指した刺激応答性微粒子の調製」菊池明彦氏(東京理科大学)…温度刺激によってコアとコロナの物性を変化しうる機能性微粒子の調整と、そのバイオマテリアルへの応用を目指した研究の一端を紹介。物理的性質を利用した新たな診断微粒子/DDSキャリアとしての応用が可能になることを示唆した。

・「散乱法を用いたポリロタキサンと環動高分子の構造解析」伊藤耕三氏(東京大学)…散乱法を用いたポリロタキサン・環動高分子の分子レベルでの静的・動的構造解析を紹介。ポリロタキサンを樹脂に少量添加することで耐衝撃特性などの力学特性が大きく変化、放射光X線散乱によってポリロタキサンの分散性に関する有益な知見が得られるとした。

 四半世紀以上にわたる散乱研究会の活動が評価され、同会世話人を務める柴山充弘氏・佐藤尚弘氏・岩井俊昭氏・木村康之氏の編著による光散乱法の教科書『光散乱法の基礎と応用』( http://www.kspub.co.jp/book/detail/1543874.html )が講談社サイエンティフィックから刊行されている。本書は、大学の学部4年生以上の学生から大学・企業の研究所の第一線で材料開発の研究などにおいて活躍している研究者を対象に、光散乱法の基礎から応用までを詳細に解説している。
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