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第9回ものづくりワールド名古屋

 

富士通など、単結晶ダイヤモンドと炭化シリコンを常温で接合する技術を開発

 富士通と富士通研究所は、炭化シリコン(SiC)基板に単結晶ダイヤモンドを常温で接合する技術を世界で初めて開発した。本技術を高出力窒化ガリウム(GaN)高電子移動度トランジスタ(HEMT)の放熱に活用することで、高出力での安定動作を可能にする。

 レーダーや無線通信の長距離化・高出力化に伴い、デバイスの発熱量が増大し性能や信頼性に影響を及ぼすため、デバイスの熱を効率的に冷却装置に伝え冷却する必要がある。単結晶ダイヤモンドは高い熱伝導率を持つことが知られているものの、従来技術では、製造プロセスで不純物除去に利用されるアルゴン(Ar)ビームにより表面に低密度なダメージ層が形成されるため接合強度が弱く、また、シリコン窒化膜(SiN)などの絶縁膜によって接合する場合はSiNの熱抵抗が熱伝導のボトルネックになっていた。

 今回、ダイヤモンドの表面を非常に薄い金属膜で保護することによって、ダメージ層の形成を抑制し、SiC基板に単結晶ダイヤモンドを常温で接合すること(常温接合)に成功した。実測した熱パラメーターを用いたシミュレーションにより、本技術を用いたデバイスの熱抵抗が従来の61%に低減することを確認したという。

Arビーム照射後のダイヤモンド断面Arビーム照射後のダイヤモンド断面

 本技術により、さらに高出力なGaN-HEMT送信用パワーアンプを実現し、気象レーダーなどのシステムへ応用した場合、レーダーの観測範囲を約1.5倍に拡大することが可能となる。