自動車技術会、春季大会と自動車技術展を開催

 自動車技術会は5月23日~25日、横浜市のパシフィコ横浜で、「2018年春季大会」を開催した。今回は、「金属材料」や「動力伝達系の最新技術」、「潤滑油・潤滑技術およびトライボロジー」、「エンジン潤滑と要素技術」などのセッションで455件の発表があった。
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 24日には「第68回自動車技術会賞」受賞式が行われ、表面改質関連では以下のとおり表彰された。

・論文賞「超短パルスレーザーによるピストンリングのテクスチャリング加工が摩擦力に及ぼす影響」山坂淨成氏・岡本大輔氏・伊東明美氏(東京都市大学)、田原大和氏・住吉哲実氏(サイバーレーザー)…エンジンの燃費改善にはピストンリングの摩擦損失を低減させることが重要である。本論文では、ピストンリングが有するガスシールやオイルシールといった機能を確保しつつ摩擦損失を低減させる手法として、トップリングのガスシールラインより下の部位にレーザー加工によりテクスチャリングを施す手法が提案されている。この加工により、テクスチャが油膜入口となるピストン下降行程で明確な摩擦力低減が確認されている。この効果は摺動条件が厳しい条件で顕著であることから、テクスチャリングにより潤滑状態が改善されていることが分かる。燃費改善のためエンジンは高過給化の傾向にあるが、そのような厳しい条件下でピストンリングに要求される機能を保持しつつ摩擦損失を低減させる手法が具体的に示されたことは高く評価される。
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180526自動車技術会03ピストンリングへのディンプル加工

・技術開発賞「高速燃焼とグローバル生産を可能にした新レーザクラッドバルブシート技術」青山宏典氏・杉山夏樹氏・谷中耕平氏・鴨 雄貴氏(トヨタ自動車)、大島 正氏(豊田中央研究所)…内燃機関の熱効率と性能の双方を向上させるために、世界トップクラスの高速燃焼を実現した。高速燃焼には吸入空気を効率よく燃焼室内に導く必要があるが、従来は予め成型したバルブシートを圧入していたため、吸気ポートが屈曲した形状となり圧損が大きかった。そこでレーザを用いてシリンダヘッド上に材料粉末を直接肉盛りする技術を開発した。本技術により世界最高の吸気効率(タンブル比2.9、流量係数0.49)を有する理想的な直線ポート形状を具現化し、高い熱効率(ガソリン車40%、HV車41%)を達成した。加えて再生可能エネルギーであるバイオエタノールに対しても高い信頼性を有する新合金と、高効率でロバスト性に優れた新工法を開発したことで、多様な使用環境や大規模生産を可能とした。本技術により持続可能な社会の実現に貢献することは高く評価される。
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 会期中に併催された自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2018 横浜」は585社/1207小間の規模で開催。表面改質関連では以下の出展があった。

 HEFグループ(H.E.F Durferrit Japan、ナノコート・ティーエス、TS群馬、TSタフトライド)では、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング「トライボロジーコーティングCERTESSTM CARBON」のラインナップをそれぞれ被覆した自動車部品の展示で紹介。今回は新開発のPVD(物理的真空蒸着)で成膜した水素フリーDLC(ta-C)「CERTESSTM TC」を施したピストンピンを初披露した。一般的な膜厚は1~5μm、膜硬度は3000~7000Hv、成膜温度(基材により異なる)は150℃、最大使用温度は450℃。自動車部品などで、極めて激しいアブレシブ摩耗や摺動腐食摩耗、凝着摩耗に耐え、超低フリクションを示す。
180526自動車技術会05ピストンピンに成膜した水素フリーDLCコーティング「CERTESSTM TC」

 日本アイ・ティ・エフは、日産自動車の新型「VCRエンジン」のリンクピンに採用された水素フリーDLCコーティング「ジニアスコートHA」を紹介。同コーティングを成膜したVCRリンクピンを展示した。膜厚の厚い同コーティングは、耐摩耗性の高さや膜強度への信頼性、油中での低摩擦性から、バルブリフターなどシリンダヘッド、ガスケット、カム、吸排気バルブ、トランスミッションなど、過酷な摺動条件で使われる部品での採用実績が多いが、VCRリンクピンでは、同コーティングの高い耐摩耗性、耐焼付き性から、リンクピンの焼付き防止を目的に採用された。
180526自動車技術会06日産自動車「VCRエンジン」のVCRリンクピンに成膜された「ジニアスコートHA」