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第9回ものづくりワールド名古屋

 

神奈川県産技センター、熱処理技術フォーラムなどを開催

熱処理技術フォーラムのもよう熱処理技術フォーラムのもよう
 神奈川県産業技術センター( http://www.kanagawa-iri.jp/ )と神奈川県産業技術交流協会( http://www.koryu-kanagawa.com/ )は10月22日~24日の三日間、神奈川・海老名市下今泉の同センターで「平成26年度 神奈川県ものづくり技術交流会」を開催、23日に「熱処理技術フォーラム」が実施された。

 当日は、同センター 機械・材料技術部 髙木眞一氏が「熱処理・表面処理技術研究会の活動報告―窒化処理したSCM435の疲労強度特性に及ぼす表面化合物層の影響―」と題して講演。厚木市のオーネックスと共同でSCM435調質鋼に対して水素センサを用いた炉内雰囲気制御によるガス窒化処理を実施し、その疲労強度特性結果について述べた。試験片は表面化合物層がγ'相主体で厚さを変化させたもの(Fe4N:化合物層の厚さを約2μm、約7μm、約20μmの3種)およびε相主体(Fe2-3N:化合物層の厚さ10μm)のものを用意した。窒素拡散硬化層の硬さ分布はいずれの試験片もほぼ同等に制御した。疲労試験は、油圧サーボ型疲労試験機を用いて応力比R=0にて実施した。その結果、γ'相主体の試験片では化合物層が厚くなるに従って疲労強度が高い値を示し、ポーラス構造がほとんどない約7μmの場合に最も高い強度を示した。しかしポーラス構造が出現する約20μmの場合は7μmと比べて低下したという。ε相主体の試験片は、いずれのγ’相主体の試験片と比較しても疲労強度が低く、未窒化材と同程度に留まったことを報告した。

 続いて、横浜国立大学 教授の福富洋志氏が「『材料技術相談』の新しい展開―横浜国立大学と産業技術センターのコラボ―」と題して、企業の抱える「材料問題」、「材料技術課題」に大学教員と同センターの研究員が協力して解決のヒント、解決策の探索方法、解決のための実験、必要な研究課題の抽出等に関する支援を行うための新しい活動について紹介した。

 パーカーS・N工業の星野 薫氏は、「オーステンパ球状黒鉛鋳鉄(ADI:Austempered Ductiele Iron)の基礎と適用部品例」について講演。球状黒鉛鋳鉄に高強度、高強靭性を付与する熱処理(ADI処理)について報告を行った。ADIは、引張り強さが約1000MPa以上、伸び約8%と従来の鋳鉄品では得られない強靭性を示すことから、鋳鍛鋼品や圧延材に代えて原価低減や軽量化が図られているという。処理の適用例では、建築用継手や自動車のアイドラーギヤ、板ばねを支持するトラック部品などで使用実績があることなどを述べた。

 日本コーティングセンターの稲垣真吾氏は、「潤滑性に優れた冷間鍛造用PVD 複合被膜の開発」で登壇。難加工材であるSUSねじの加工パンチに対する耐凝着性に優れたPVDコーティングの開発について報告を行った。開発したコーティング膜は、TiSiNに炭素を加えたTiSiCN膜11層の多層膜で、打鋲試験においてノンコート品が15000~20000ショットで寿命に至るのに対して、開発した膜は30000~47000ショットまで向上したことなどを報告した。このコーティング技術は、同社で「ノーヴァスコート」と命名し、量産化の試験を開始しているという。

 アイ・シイ・エスの三塚純男氏は「航空宇宙分野への参入と熱処理管理技術者」と題して、航空宇宙分野への参入経緯や航空機部品に要求される熱処理管理技術とその確立のための取り組み、Nadcap認証等の必要性と審査内容など、同社の長年にわたる航空宇宙産業分野への取り組みと今後の展望について報告した。

 また、表面改質関連では、同日にDLCコーティング技術フォーラムが行われ、以下の講演が行われた。「大気圧プラズマCVD法による非晶質炭素膜合成」鈴木哲也氏(慶應義塾大学)、「DLCコーティングの開発の歴史と実用化状況」大原久典氏(住友電気工業)、「自動車部品へのDLCコーティング適用状況」加納 眞氏(同センター)、「DLC膜種の評価方法と特性の関係」金子 智氏(同)、「大気圧プラスマCVD法で作製した非晶質炭素膜の特性および実用化への取り組み」渡邊敏行氏(同)、「DLC膜の摩擦特性に及ぼす湿度と前処理洗浄剤の影響」吉田 健太郎氏(同)。