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第9回ものづくりワールド名古屋

 

東北特殊鋼と大同特殊鋼、高硬度と高密着性を両立したTi-Mo系硬質被膜とターゲット材を開発

 東北特殊鋼( http://www.tohokusteel.com/ )と大同特殊鋼( http://www.daido.co.jp )は、HV4500HVの高硬度と優れた密着性を両立したチタンモリブデン系硬質被膜「TM3(ティー・エム・キューブ)シリーズ」およびターゲット材「STAR-TM3(スター・ティー・エム・キューブ)」を開発、販売を開始した。

 金型や切削工具には寿命延長、能率向上を目的にチタン系、クロム系、チタンアルミ系、クロムアルミ系、あるいはDLCなどの硬質被膜がコーティングされており、東北特殊鋼は受託加工を、大同特殊鋼はターゲット材を製造・販売している。今回、両社の技術を活用し、工具や金型の母材との密着性が高く潤滑性に優れたモリブデンを添加した硬質被膜とターゲット材を開発した。

 硬質被膜がモリブデンの単一金属層を含む窒化チタンとの混合組織の場合には、硬度の低いモリブデンが全体の硬度を下げてしまう問題があったが、大同特殊鋼独自の溶解技術を活用してチタンと高い融点(2600℃以上)のモリブデンとの均一な金属組織を有する固溶体型の合金ターゲット材製造プロセスを確立した。そして、この製法で製造したターゲット材を使用することで、極めて硬度の高いチタンモリブデン合金コーティング被膜を実現した。

 金型や工具にコーティングされた被膜は、母材との物理特性の違いにより被膜と母材の界面に過大な応力が発生し、はく離に至る。一般に高硬度被膜は物理特性が母材と大きく異なることからはく離しやすい問題があり、その解決策としてタングステンカーバイドやクロムなどのターゲット材を使用した下地層による密着性の改善が図られている。一方、今回開発したターゲット材を使用した被膜は母材との密着性が優れており、下地用ターゲット材を用いた成膜の必要がないため、製造プロセスにおけるコスト削減も可能となる。

 これらの特性から、東北特殊鋼で実施した鍛造金型での寿命試験において、開発被膜を施した鍛造金型は従来の窒化チタン被膜や窒化チタンアルミ被膜を施した金型に比べ約3倍の寿命となる結果が得られたという。

鍛造金型での寿命試験(shot数)鍛造金型での寿命試験(shot数)