第9回岩木賞に不二WPCや水谷氏(東北大学大学院)、南氏(大阪府立産業技術総合研究所)らが決定

 トライボコーティング技術研究会、未来生産システム学協会(NPS)などからなる岩木賞審査委員会は、「第9回 岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」を発表した。今回は優秀賞に業績名「微粒子投射処理とDLCなどの硬質薄膜形成技術の複合化」で不二WPC(熊谷正夫氏、下平英二氏、住吉弘至氏)が受賞した。また、特別賞には業績名「レーザ照射を用いたバイオインプラントの骨親和インターフェース創成」で水谷正義氏・厨川常元氏(東北大学大学院)・早川 徹氏(鶴見大学)と、業績名「放電加工によるチタン材の着色仕上げ」で南 久氏(大阪府立産業技術総合研究所)・増井清徳氏(E.D.M.ラボ(元 大阪府立産業技術総合研究所))が、それぞれ受賞した。

 優秀賞「微粒子投射処理とDLCなどの硬質薄膜形成技術の複合化」の業績は、機械部品の疲労強度向上やテクスチャリング形成による摩擦・摩耗特性の向上に幅広く用いられる「微粒子投射処理(FPB、商標ではWPC)」と「硬質薄膜形成技術」の複合化により、微粒子投射処理における表面形状の維持・保存といった課題や、硬質薄膜形成技術におけるDLC膜の密着性向上といった課題を解決し、エンジンのアルミピストンへの適用などで耐久性向上や燃費向上などに貢献する。同複合処理だけでなく、解析を含めたソリューションを提供することによって、潤滑油剤の適用が難しい食品加工や医療機器関連など内需拡大にも貢献できることや、今後の展開への期待感などが評価されたもの。

 特別賞「レーザ照射を用いたバイオインプラントの骨親和インターフェース創成」の業績は、レーザ照射を利用して、チタン系バイオインプラントの表面に骨芽細胞との接着性を向上させる粒状の微細なテクスチャを形成させる表面改質手法を確立したもの。レーザでチタン系バイオインプラントにテクスチャを形成する際に除去されたチタン(熱せられチタニアとなった)デブリが、テクスチャ周囲に付着、骨芽細胞の接着性向上と、骨の主成分であるハイドロキシアパタイトの形成を同時に達成、その相乗効果によって骨親和性に優れるインターフェースを創成可能にする。濡れ性を制御できることでトライボロジー特性も制御可能であることなどが評価された。

 特別賞「放電加工によるチタン材の着色仕上げ」の業績は、水中でチタン材を放電加工することで、形状加工と同時に様々な色調の加工面に仕上げ、チタン表面の装飾性やファッション性などを付与する意匠性表面処理としての新しい着色法に関するもの。一般的な「陽極酸化法」のように前加工面の影響を受けず、また作業環境・廃液処理の問題がない、純水中での放電加工では、前加工面を除去すると同時に、平均加工電圧の制御で酸化皮膜の膜厚を調節し加工面を任意の色調に表現できるというシンプルでクリーンな着色法で、耐食性、耐候性、耐摩耗性も向上できることから、装飾性と機械的特性を高めるなどチタン材の新たな用途を開拓する技術として評価された。

 岩木賞は表面改質、トライボコーティング分野で多大な業績を上げた故・岩木正哉博士(理化学研究所元主任研究員、トライボコーティング技術研究会前会長)の偉業を讃えて、当該技術分野と関連分野での著しい業績を顕彰するもの。トライボコーティング技術研究会が提唱して2008年度に創設、未来生産システム学協会(NPS)が表彰事業を行っている。

 優秀賞は開発技術が日本国内で高い水準にあり新規独創性に優れ、実用化され社会的貢献が認められる業績に対して、また、特別賞は開発技術が高い水準にあり、新規/独創性に優れ、実用化されているか実用化の途上にあり、社会的貢献が認められるものに対して、贈られる。

 第9回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、2017年2月24日に埼玉県和光市の理化学研究所・和光研究所で開催される「シンポジウム:第19回トライボコーティングの現状と将来」で行われる予定。

前回の記念講演のもよう前回の記念講演のもよう