第10回岩木賞に中村修二氏・Soraa社、大塚電子、グウェン ボロレ氏・Anton Paar社が決定

 トライボコーティング技術研究会、未来生産システム学協会(NPS)などからなる岩木賞審査委員会は、「第10回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」を発表した。今回は中村修二氏(カリフォルニア大学サンタバーバラ校 教授)と米国Soraa社が共同で、業績名「人体に優しい、紫色LEDを使った、太陽光に近い白色LEDの開発と実用化」により、岩木賞初となる国際賞・事業賞の同時受賞に輝いた。また、大塚電子が、業績名「反射分光干渉法を用いた三次元形状体へのコーティング厚みの非破壊測定」によって優秀賞を受賞した。さらに、グウェン ボロレ氏(アントンパール・ジャパン)とオーストリアのAnton Paar社が、業績名「PVDコーティング膜の品質管理法の確立と普及」によって、岩木賞初となる法人・個人同時受賞での事業賞に輝いた。

 国際賞・事業賞同時受賞の業績「人体に優しい、紫色LEDを使った、太陽光に近い白色LED の開発と実用化」は、窒化ガリウム(GaN)を用いたLED(発光ダイオード)の開発において必須となる良質なGaN 薄膜を形成するために、ツーフロー有機金属気相成長(MOCVD)法を発案したこと、またp型GaNの生成を、それまで他の研究グループによって見出されていた電子線を用いずに、アニール処理によって実現したことなどが認められた。また、青色LEDでノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏が起業したベンチャー企業Soraa社が事業化に成功した、GaN-On-GaNタイプの紫色LEDは人工光では自然光のスペクトルに最も近いことから「ブルーライト症候群」の抑制につながると言われているほか、美術品、食品、医療用途などにおいて、原色に正確な発色を可能とする照明について、将来的に新たな波及効果が期待されることが大きく評価された。

 優秀賞「反射分光干渉法を用いた三次元形状体へのコーティング厚みの非破壊測定」の業績は、独自の「顕微反射分光方式」によって、形状のある実サンプルに被覆されたDLCなどコーティング膜の厚みの、非破壊・非接触、高精度・高速での測定を実現した技術が認められた。実際のコーティング対象となる材料は三次元形状を持っており、平板のモニター・サンプルを用意してのボールによる研磨式試験法やSEMといった破壊検査手法では対応できなかったが、本業績では、独自の顕微反射分光方式を用い、かつ最小3μmの測定径で、三次元形状を持つ材料であってもオートフォーカス機能によるスキャニングで非破壊・非接触での各箇所の膜厚測定を実現した。膜厚だけでなく光学定数(屈折率、消衰係数)といった膜由来の構造解析も可能で、機能性フィルム、プラスチック、半導体、電池材料、光学材料、自動車部品、ディスプレイ用部材、医用部材など、幅広い応用が可能なことが評価された。

 事業賞を受賞した業績「PVDコーティング膜の品質管理法の確立と普及」は、種々の製品への硬質薄膜の実用化を進めるのに必要となる基礎データを取得するための、Anton Paar社のスクラッチ試験機、膜厚計、ナノインデンテーション試験機、摩擦摩耗試験機などの評価・分析装置(旧CSM Instruments社製品で、Anton Paar社が2013年に買収)を日本に普及させ、日本におけるPVD(物理蒸着)コーティング市場の発展・拡大を被膜の評価・分析面から支えたグウェン ボロレ氏の長年の貢献が認められた。同時にAnton Paar 社の評価・分析装置が、成膜装置メーカーと受託加工業者(ジョブショップ)において硬質薄膜の機能保証に必要な評価試験装置のデファクトスタンダードとしての地位を確立するまでに普及したことが評価されての受賞となった。

 第10回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、2018年2月23日に東京都板橋区の板橋区立文化会館で開催される「シンポジウム:第20回トライボコーティングの現状と将来」で行われる予定。

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