メインコンテンツに移動
第9回ものづくりワールド名古屋

 

HEF DURFERRIT JAPAN、水素関連ソリューション向けにPVDコーティング技術を披露

 HEF DURFERRIT JAPAN(https://www.hefdurferritjapan.co.jp/)は2月28日~3月1日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「H2 & FC EXPO【春】~第21回 【国際】水素・燃料電池展~」に出展、燃料電池車(FCV)や水素関連設備向けに最新のPVDコーティング技術を披露した。

HEF H2&FC Expo 出展のようす mst 表面改質
出展のようす

 

燃料電池セパレータ用PVDコーティング

 HEFでは、プロトン交換膜(PEM)型燃料電池(FC)のセパレータ(バイポーラプレート)用に、導電性、耐食性、密着性に優れたPVD(物理蒸着)コーティングを開発している。

 バイポーラプレートの基材には、機械的物性、高い電気伝導性、高いガス遮断性といったセパレータに要求される性能を満たす各種の合金が用いられるが、金属表面で発生する電気化学的な腐食への対処が必要になる。これに対しHEFが開発したバイポーラプレート向けPVDコーティング(コーティング成分としてAu、C、Cr等があるが、性能とコストの観点からC(カーボン)コーティングが主流)では、ステンレス、チタン、アルミニウムといったバイポーラプレートの基材を問わず高い耐食性(陽極:1μA/cm2未満・アクティブピークなし、陰極:1μA/cm2未満)・導電性(100S/cm以上)と低い接触抵抗値(0.01Ω・cm未満)を持つ被膜「セルテスELEC FC/ELEC FC+」を開発している。

 トヨタ自動車をはじめ燃料電池車の開発は日本が先行しており、今後、乗用車、商用車、定置用などで、日本での量産立ち上げへの移行が見込まれている。これに対しHEFでは、成膜面を最適な状態にする自動洗浄ラインから、最大の生産効率を実現する専用治具、生産性を最大化する最先端の成膜装置といったすべての専用生産設備を設計・開発・製造しており、それらを組み込んだ「自動インライン式コーティング設備」の初号機が先ごろ完成し、現在フランス本社で試運転を行っている。順次、自動インライン式コーティング設備の2号機、3号機を製造し、2026~2027年ごろに予定されているFCV向けカーボンコーティングの日本での受託加工の際には、燃料電池専用の新拠点を設立し、そこに自動インライン式コーティング設備を設置して量産に対応する計画としている。
 

HEF H2&FC Expo PEMFCバイポーラプレート用PVDコーティング mst 表面改質
PEMFCバイポーラプレート用PVDコーティング


 

HEF H2&FC Expo 自動インライン式コーティング設備 mst 表面改質
自動インライン式コーティング設備

 

水電解装置用PVD/PECVDコーティング

 水電解装置(エレクトロライザー)では、再生可能電源からの電流を使用して水分子が酸素と水素に分解される。水電解装置はスタック(複数のセルの直列アッセンブリー)と、発電機、コンプレッサー、ポンプ、水処理などのユニットで構成されている。水素電解装置内の各セルには、水素イオン(プロトン)が通る多孔質輸送層(PTL)と、バイポーラ/セパレータプレートが含まれ、ガスや水などの流体の輸送と電気伝導において重要な役割を果たす。

 これらは腐食性の高い環境下で動作するため、性能を最適化し耐久性を保証するために表面改質技術が要求される。HEFは、欧州で先行するプロトン交換膜(PEM)型水電解装置において、PVDおよびプラズマCVD(PECVD)技術によって水電解装置用コーティングを開発している。本コーティングは水電解の性能を損なうことなく、貴金属の使用量を削減できることを確認している。

 HEFでは表面改質/機能化に関して、さまざまな水電解技術の材料課題に対応。競争力のある価格での大量生産や、高性能で持続可能なソリューション、ユーザーニーズに合わせたオーダーメイドのソリューションを提供できる。
 日本国内では、ナノコート・ティーエス 石川事業所で受託加工を行う予定となっている。
 
 

HEF H2&FC Expo 水電解装置用コーティング:左はセパレータ、右はPTLにコーティングしたサンプル mst 表面改質
水電解装置用コーティング:左はセパレータ、右はPTLにコーティングしたサンプル

 

金属材料の水素脆性を防ぐDLCコーティング

 炭素鋼やステンレス鋼、アルミニウム合金などの多くの金属材料では、水素の存在が機械的特性に悪影響を与えることがよく知らせている。HEFでは高度な技術に裏打ちされた柔軟な発想とDLCコーティングの知識によって、ガスバリア機能を有する新しい特殊カーボンコーティング(水素バリアDLC)を開発している。このコーティング膜は本来のドライでの低摩擦係数を維持しつつ、水素拡散を劇的に減少させる。
 

HEF H2&FC Expo 水素バリアDLC mst 表面改質
水素バリアDLC

 

 HEFでは燃料電池あるいは水電解装置へのコーティングに対するユーザーのニーズの高まりに応えるため、HEFでは現在、フランス本社に最初のパイロットプラントを建設中で、2025年までに大規模な展開が計画されている。