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第9回ものづくりワールド名古屋

 

Aggregator

NTN回転フリクションを62%低減し車両燃費を約0.53%向上するハブベアリングを開発

4年 10ヶ月 ago
NTN回転フリクションを62%低減し車両燃費を約0.53%向上するハブベアリングを開発kat 2019年06日03日(月) in in

 NTNは、走行時の回転フリクションを従来品比で62%低減し車両燃費を約0.53%向上する「低フリクションハブベアリングⅢ」を開発した。

低フリクションハブベアリングⅢ

 近年、グローバルで自動車の燃費向上やCO2排出規制の強化が進み、車両走行時の消費エネルギーの削減がますます重要になっている。燃費や電費の効率をより高めるため、タイヤの回転を支えるハブベアリングには基本性能である寿命や強度を満たした上で、さらなる回転フリクションの低減が求められている。

 NTNではこれまで、ハブベアリングと周辺部品とのユニット化(GEN1~GEN3)を進め小型・軽量化による低燃費化や組付性の向上に貢献してきたほか、材料やグリース、シールなどの改良を重ねることで、長寿命化と低フリクション化を実現した商品を市場展開し、現在ではハブベアリングで世界シェアトップを誇る。

 同社では今回、低フリクション化を追求したグリースを開発し、回転フリクションを従来品比62%低減し、車両燃費を約0.53%改善する「低フリクションハブベアリングIII」を開発(同社計算に基づいて算出した結果、0.53%燃費向上によって一度の給油で4.5~5.5km走行距離が増加)。

 新たに開発したグリースは、「低フリクションハブベアリングII」で採用したラビリンス付きシール構造を適用しつつ、同ベアリングで採用したグリースを配合成分から見直し、さらなる低フリクション化を実現した。市場で問題となっている低温環境下におけるフレッティング摩耗に対応できるよう、寿命や耐フレッティング性についても向上させたほか、ハブベアリング内部の予圧を最適化することで、軸受の性能を維持したまま軸受自体の回転フリクションを低減した。

構造

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NTN、インドネシアでIGP社と等速ジョイント事業の合弁契約を締結

4年 10ヶ月 ago
NTN、インドネシアでIGP社と等速ジョイント事業の合弁契約を締結kat 2019年06日03日(月) in in

 NTNは、インドネシアの自動車市場で需要が拡大する前輪駆動車(FF車)に向けたFF車に必要不可欠な等速ジョイントの供給拡大を目的に、アストラグループのInti Ganda Perdana(IGP社)と合弁契約を締結、ジャワ島西部・カラワン地区(KIM工業団地)に等速ジョイントを製造する合弁会社「Astra NTN Driveshaft Indonesia」を設立する。資本金は1,200億ルピアで、IGP社が51%、NTNが49%を出資する。

調印式で:左から、Budi Pranadi IGP社副社長、Kusharijono IGP社社長、井上博徳NTN副社長

 インドネシアでは各種の環境規制等を背景に、自動車市場においては車軸懸架(リジッドアクスル)方式の後輪駆動車(FR車)から、前輪駆動車(FF車)への生産シフトが加速している。これに伴いFF車に必要不可欠な駆動部品である等速ジョイントの需要も急拡大が見込まれている。NTNは、アセアン・南アジア地域においては、タイ・インドで等速ジョイントの現地生産を行っているものの、これまでインドネシアで等速ジョイントの現地生産は行っていなかった。

 こうした中、インドネシアのアストラグループで自動車部品の製造を担うIGP社と、等速ジョイントの現地生産に関する合弁事業を検討し、インドネシア市場における現地生産の必要性と、販売・シェア拡大という双方の目的が一致したことで、合弁契約を締結することとなったもの。

 今後は、合弁契約に基づく新会社を近く設立し、2020年8月の量産開始を目指して工場の建設を進める。NTNではインドネシアで初めて現地生産を行うことによって、顧客対応の迅速化と納入リードタイムの短縮を実現し、インドネシア自動車市場におけるプレゼンス向上と、等速ジョイントの圧倒的なシェア確保を目指した事業展開を進めていく。

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ジェイテクト、自立歩行支援を目的とした介護機器開発に着手

4年 11ヶ月 ago
ジェイテクト、自立歩行支援を目的とした介護機器開発に着手kat 2019年05日28日(火) in in

 ジェイテクトは、2017年4月に新規事業推進部を組織、少子高齢化・環境・エネルギー問題といった将来の社会課題に対するニーズと同社の既存事業で培った技術やノウハウといったシーズを掛け合わせて新規事業の立ち上げを推進しているが、2018年8月に販売を開始したパワーアシストスーツ「J-PAS」に続き、今回、自動車部品で培った安全技術とJ-PASのヒトへのアシスト制御技術を活かして、自立歩行支援を目的とした介護機器の開発に着手した。開発品は「J-Walker テクテック」で、キャッチコピーは「いつもの歩行器にウォーキング理論をプラス」。

商品外観図

 日本では高齢化社会が進行し、社会保障費・介護士不足が深刻な問題となってきており、健康寿命を延ばす手段が求められている。開発品は、自立歩行が困難になってきた要介護者の歩行支援を促し、さらには自立度を向上することを目的に、トレーニング機能を保有することを特長としている。

 トレーニング機能のポイントは、①ボールウォーキング研究成果に基づく腕振り歩行で市政の良い歩行が可能、②歩行器と使用者が適切な距離を保てるように設定。

 歩行アシスト機能では、自動車分野で培った安全技術で上り坂アシストや下り坂ブレーキ、片流れ防止など、安心して歩行できるようにサポートしている。

 同社では「介護施設および家庭での使用を想定し、2020年度の販売開始を目指し開発を推進。自立支援歩行器を皮切りに介護業界に参入。本製品に加え、製品・サービスを充実させ、介護領域でのNo.1&Only Oneの価値を提供していく」としている。

 なお同社では、本年秋をめどに本製品に関する詳しい発表を行うことを予定している。

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自動車技術会、人とくるまのテクノロジー展2019を開催

4年 11ヶ月 ago
自動車技術会、人とくるまのテクノロジー展2019を開催 in kat 2019年05日27日(月) in in

 自動車技術会は5月22日~24日、横浜市のパシフィコ横浜で自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2019横浜」を開催した。エンジンの燃費改善に加え、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)などの電動化、先進運転支援システム(ADAS)などに対応する最新の製品・技術が披露された。ベアリング&モーション関連技術では以下の展示があった。

開催のもよう

 イグスは、金属製部品の1/7という比重の樹脂製すべり軸受「イグリデュール」による、自動車の燃費向上・電費向上のためのソリューションを提示した。ドアやマルチヒンジのジョイント部分に採用することで無潤滑で錆びることなく静粛に可動。ペダルシステムではアキシャル/ラジアル両方で予圧を与えたイグリデュール樹脂すべり軸受が、振動やきしみ音の発生を抑え、局部荷重や高い静荷重にも対応できることなどを謳った。また、シートの可動部にイグリデュール無給油ブッシュを採用することで、ノイズなく簡単に調整できるほか、最大120 MPaの高い静荷重に対応、電着塗装中の再較正によって、すきまを最小限におさえ、きしみ音を防ぐことなどをアピールした

樹脂製すべり軸受「イグリデュール」による、自動車の燃費向上・電費向上のためのソリューション

 NTNは、タイヤの回転を支えるハブベアリングの回転フリクションを従来品比で62%低減し、車両燃費を約0.53%改善した「低フリクションハブベアリングⅢ」を披露した。配合成分と粘度を改良した新グリースの採用とラビリンス付きシール構造の適用、軸受内部の予圧の最適化で、軸受性能を維持しながら大幅な回転フリクション低減を図ったほか、低温環境下でのフレッティング摩耗も抑制できる。また、タイミングチェーンの張力を維持する油圧式オートテンショナについて、構造の簡素化によるチェーンテンショナの小型化と、作動に必要なオイル量の大幅な削減によるエンジンの低燃費化に貢献する「低燃費対応小型チェーンテンショナ」を紹介。内部に貯留したオイルでエンジン始動後に適正な油圧でチェーンの張力維持が可能となり、チェーンの張力不足による異音も抑制する。

フリクションを従来品比62%低減し車両燃費を約0.53%改善した「低フリクションハブベアリングⅢ」

 ジェイテクトは、ステアリングホイールの操作を電気信号で、転舵装置に伝える次世代のステアリングシステム「ステアバイワイヤシステム」を披露した。操舵フィーリングを向上するとともに自動運転でのシステムによる操作とドライバーによる操作をスムースに融合・移譲する制御技術を実現。自動運転時にはステアリングホイールの格納も可能。また、独自技術により世界初の動作温度範囲-40℃~85℃を実現する「高耐熱リチウムイオンキャパシタ」を紹介。活用例として、ステアバイワイヤシステムの補助電源システムとして展示するとともに、量産仕様(本年11月本格量産予定)の製品群を展示した。さらに、自社開発のレアアース使用を抑える「重希土類フリーIPMモータ(埋込磁石型モータ)」を展示。SPMモータ(表面磁石型モータ)構造に比べ約2倍の定格トルクと世界最高レベルの低トルク変動を実現。

高耐熱リチウムイオンキャパシタと、「第31回国際電気自動車シンポジウム」で「Young Investigator Award」を受賞した開発者の三尾巧美氏

 ダイセル・エボニックは、金属・ゴムホースに比べ軽量で自由に曲げ加工が可能な樹脂チューブシステム「MLT8000」を披露した。内層がPP樹脂のため耐加水分解性に優れるほか、ポリアミド樹脂の外層による強靭な機械特性を持つことなど、燃料・冷却配管システムの軽量化+信頼性向上をアピール。樹脂チューブシステムが、金属を主に利用した配管に比べ防錆処理が不要なほか30~50%以上の軽量化が可能なことや、ゴムホースと比較して生産効率が高いうえ占有容積が少なく狭いエンジンルームでの容積の自由度をアップするといった利点があることなどを謳った。

樹脂チューブシステムによる燃料・冷却配管システムの軽量化・高信頼性の提案

 大同メタル工業は5 月22 日~ 24 日に開催された「人とくるまのテクノロジー展」に出展、エンジンの機械損失低減に貢献するエンジンベアリングの低フリクション技術として、軸受表面に固体潤滑剤を分散させた樹脂層を施した耐摩耗性向上コーティングによってアイドルストップ仕様エンジン用軸受として採用されている「DLA02」、さらに最近開発された耐摩耗・耐焼付き性コーティングを施したエンジンベアリング「DLA06」を紹介した。開発品は、軸受表面に固体潤滑剤を分散させた樹脂層を若干柔らかくすることで異物混入時の耐摩耗性を高める異物埋収性を付与したほか、低粘度化の進むエンジンオイルの使用条件下で発生しやすい温度上昇を抑制、焼付きを防ぐ。

エンジンの機械損失低減に貢献するエンジンベアリングの低フリクション技術

 デュポンは、自動車の燃費低減からオイルの低粘度化が進む一方で、部品の高速回転化が進展する中、無潤滑下でのPV限界値が高く耐摩耗性に優れるポリイミド樹脂「ベスペル®SP」を用いた、高速回転・低粘度オイル下での耐摩耗・低摩擦ソリューションを提示した。最適な潤滑溝の設計と自由度の高い設計が可能なため、高回転での潤滑不足をかいけつ、アルミ部品との直接しゅう動も可能としている。オイルの低粘度化(潤滑膜の薄化)により焼付き・摩耗のリスクが増えてきている中で、駆動系ユニットへのべスペル製スラストワッシャーを適用することで境界潤滑領域での優れた摩擦摩耗特性を発揮、焼付き・溶融を起こさないことをアピール。

べスペル製スラストワッシャーのリングギヤへの適用例

 日本ピストンリングは、平滑表面でフリクションが低減でき、a-C/ta-C比率の最適化で自己潤滑性と高い耐摩耗性を両立、さらに耐久信頼性を向上させる厚膜タイプの「DLCコーティングリング」を紹介した。また、シリンダライナ内周面に微細なディンプルを形成することでピストンリングとの間の流体潤滑による摩擦力を低減しエンジンの燃費向上を実現する世界初の「ディンプルライナ」を披露した。さらに、「3D形状圧粉コアを採用したアキシャルギャップ型高トルクモータ」を紹介、高トルク化によってインホイールモータとして使用することでダイレクト駆動を可能にことや、ギヤレス化による機械損失の低減とギヤ音の削減を実現できること、さらにはAir Gap可変によるモータ特性のチューニングが可能なことをアピールした。

ピストンリングとの間の流体潤滑による摩擦力を低減しエンジンの燃費向上を実現する世界初の「ディンプルライナ」

 日本精工は、EVの走行性能と電費(航続距離)改善策としてEV駆動システムの2速変速化と軽量化に取り組んでいるが、2速変速化の効果を大きくするために段間差を大きくすることで課題となる変速ショックの低減に関して、出力軸のトルクを磁歪式トルクセンサで検出し、モータと電動シフトアクチュエータをフィードバック制御することで、シームレスな変速を実現する「シームレス 2スピード eアクスル」を披露した。高速モータにトラクションドライブ減速機を組合せることで、高い静音性とシステムの小型・軽量化を実現する。また、このシームレス 2スピード eアクスルを実現する製品として「磁歪式トルクセンサ」を紹介。シャフトにトルクが作用すると、逆磁歪効果により、せん断応力を検出しトルクに変換する。非接触検出、小型・軽量、高応答性などの特徴があり、パワートレインのトルク測定に適用できる。

モータと電動シフトアクチュエータをフィードバック制御することで、シームレスな変速を実現する「シームレス 2スピード eアクスル」

 不二越は、玉軸受化で低トルク化しつつ剛性を確保する「デファレンシャルギヤ用複列4点接触玉軸受」と「ELT(Extra Low Torque)軸受」を紹介した。前者は一体型のため予圧管理が不要で、大幅な損失低減が可能。後者は円すいころ軸受と同様の組付けが可能で、円すいころ軸受と同等の噛み合い点変位を有する。また、軸受サイズを変更せずに“クリープ"と呼ばれる軸受のすべり現象を抑制する「トランスミッション用耐クリープ軸受」を展示した。外輪歪みによるクリープへの対策軸受としては、軌道溝を多点接触化することで荷重を分散し外輪変形量を抑制する「多点接触玉軸受」や、外輪外径に特殊コーティングを施すことでハウジングの摩耗を抑制する「外径コーティング軸受」を、連れ周りによるクリープへの対策軸受としては、「Oリング付き軸受」や「外径コーティング軸受」を提示した。

円すいころ軸受と同様の組付けが可能で、円すいころ軸受と同等の噛み合い点変位を有する「ELT(Extra Low Torque)軸受」

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エボニック、高機能ポリアミド事業を再編

4年 11ヶ月 ago
エボニック、高機能ポリアミド事業を再編kat 2019年5月16日(木曜日) in

 エボニックは、自動車、オイル・ガス、3Dプリンティング、光学系アプリケーションなどの成長市場向けの高機能材料に注力し、新しいポリアミド12(PA12)製造施設の建設を開始すると同時に、マール・ケミカルパークでの透明ポリアミドの生産増強を進めているが、再編プロセスの一環として、エボニックは、ドイツのヴィッテンで製造しているポリフタルアミド(PPA)ビジネスから完全に撤退する。

 同社ハイパフォーマンスポリマーズ事業部の責任者であるラルフ・デュッセル氏は、「ポリアミド事業の再編により、軽量構造、3Dプリンティング、複合材料など成長が確実な市場における魅力的な用途のスペシャルティ マテリアルに生産・技術の強みを集中させていく。このことが継続的な成長のための確固たる基盤となるだろう。顧客の要求に応えるために、今回の再編によって高度なソリューションの開発へとより一層注力していく」と語っている。

 エボニックはドイツでの約4億ユーロの投資により、PA12に対する総合的な生産能力を50%以上増加させる。増設されるポリマーおよびその前駆体の製造設備は、ノルトライン=ヴェストファーレン州のマール・ケミカルパークに建設され、既存のポリアミド12製造プラントを補完する。この複合施設は2021年前半に稼動する予定。

 同社では同時に、マールにおける透明ポリアミドの生産も拡大する。この生産拡大は、2020年第1四半期に完了する予定で、これらの増強により、高機能材料の総合的な生産能力は倍増する。

 また、ポリアミド事業の再編成に伴い、2020年第1四半期末までにヴィッテンで製造しているPPAの製造・販売を中止する計画で、PPAプラントからマールに従業員を移し、新PA12工場にリソースを配分する予定。

 同社グラニュールズ&コンパウンズの責任者であるヨルダネス・サボポウロス氏は、「高機能ポリマーに焦点を当てたマーケティングにより、社内シナジーの活用として、経験豊かなヴィッテンの従業員にマールの新しいポリアミド12製造施設を職場として提供し、長年にわたるポリマーの重合とコンパウンドの経験を活かしていくことができる」と述べている。

 エボニックは現在、ヴィッテンで300人近くを雇用、約16ヘクタールの有機化合物生産用の複数の設備を運営している。塗料、コーティング、接着剤産業向け原料の主要生産拠点の一つとなっており、2018年にはヴィッテンにおいて特殊共重合ポリエステルの新しいプラントが稼働した。

 Terra(テラ)シリーズのバイオベースポリマーは、エボニックの事業ポートフォリオに留まり、再編された高機能ポリマー事業を補完する。

 エボニックは、高機能プラスチックの開発・製造に50年以上の経験を有しており、広範囲の製品ポートフォリオによって、あらゆる産業用途のためのソリューション提供を可能にしている。

マール・ケミカルパーク: エボニック、ポリアミド関連の高機能ポリマー事業再編

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フェローテック、ペルチェ素子・磁性流体の自動車分野での応用を加速

4年 11ヶ月 ago
フェローテック、ペルチェ素子・磁性流体の自動車分野での応用を加速kat 2019年5月16日(木曜日) in

 フェローテックホールディングス( http://www.ferrotec.co.jp/ )傘下のフェローテック( http://www.ferrotec.jp/ )は2018年1月に「オートモーティブプロジェクト」を立ち上げた。すでに自動車用温度調節シート向けで多くの採用実績を持つ「サーモモジュール(ペルチェ素子)」、さらには同社創業の技術であり、車載スピーカーで実績のある「磁性流体」などを中心に、自動車市場の攻略に取り組んでいる。オートモーティブプロジェクトでは、グローバルでの自動車分野でのニーズを収集、燃費向上につながる自動車の軽量化や、電動化、自動運転化などに取り組む自動車業界に対し、サーモモジュールや磁性流体の新しい適用を提案している。

 ここでは、同社TE営業部長 八田 貴幸氏、FF営業部 部長 廣田 泰丈 氏、オートモーティブプロジェクト 課長 二ノ瀬 悟 氏に、本年1月16日~18日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「第11回オートモーティブワールド」で披露した、ペルチェ素子および磁性流体の自動車分野での応用技術を中心に、同社の自動車分野での取組みについて話を聞いた。

左から廣田 氏、二ノ瀬 氏、八田 氏

自動車分野でのペルチェ素子の適用とメリット

 ペルチェ素子(サーモモジュール)は、対象物を温めたり冷やしたりする半導体冷熱素子のことで、N型とP型という異なる性質を持った半導体素子を組み合わせたモジュールに、直流の電気を流すと熱が移動し、一方の面が吸熱(冷却)し、反対の面が放熱(加熱)するというペルチェ効果を応用したもの。電源の極性を逆にすると、吸熱と放熱を簡単に切り替えることができる。

 ペルチェ素子のこうした特性を活かし自動車分野では温調シートで多数の実績を持つが、今回の展示会では温調シート以外の適用を拡大すべく、以下のような提案と適用によるメリットを打ち出した。

ペルチェ素子の新提案とメリットについて語る八田 氏

◆車載用カップホルダー
 フェローテックのペルチェ素子を用いた車載用カップホルダーはすでに、同社のペルチェ素子を利用した自動車用温度調節シートを自動車OEMに納入している業者を通じて、海外の自動車OEMで採用実績がある。

 ドリンクを冷えたままに、あるいは温かいままに保つカップホルダーを車載する車両では、HVACユニット (Heating Ventilation Air Conditioning unit:暖房・換気・空調ユニット)が採用されるケースが多い。つまりエアコンの風を利用して冷却・加熱がなされているのだが、この方式は冷却・加熱効率が悪く、また電力消費もばかにならない。これに対してペルチェ素子は小型・軽量・省電力のシステムで、カップホルダーへの加熱・冷却の切り替えはモード切り替えスイッチによって直流電流の極性を反転するだけで行え、冷却・加熱機能を0.1℃単位で設定することができる。

 このペルチェ素子を利用した省電力で積極的に温度制御が可能なカップホルダーに対し、国内の自動車OEMも関心を示していることから、同社ではプロトタイプを製作・提出し、OEMで評価してもらう予定だ。まずはHVAC方式を採用している車両を対象に、ペルチェ式カップホルダーの採用を促していく考えだ。

ペルチェ式カップホルダー

◆バッテリーの温度コントロール
 電気自動車(EV)のバッテリーとなるリチウムイオン電池は温度にセンシティブで、高温の場合、常温に比べ内部抵抗が上がり劣化が促進しやすく、低温の場合パフォーマンスが低下して、航続距離に影響を及ぼす。例えば急速充電を繰り返すとバッテリーの過熱劣化が起こり、それを防ぐフェールセーフ機能によって充電速度を低下させる制御が入る。それを防ぐにはバッテリーの発熱をコントロールする必要があるが、ラジエーターを用いた水冷などの自然冷却では細やかな温度制御ができない。

 これに対しペルチェ素子は微妙な温度制御が可能で、バッテリーを最適な温度に保つことが可能なため充分な充電が可能になる。さらにEVでは重量の増加も電力消費の増大、航続距離の低下につながることから、軽量の温調システムとしてもペルチェ素子が貢献できると見ている。

◆キャビンの温度コントロール
 これまでの抵抗式ヒーターはジュール効果によって発生する熱エネルギー(ジュール熱)を利用したもので、発熱効率(COP)が80~90%程度にとどまっている。

 これに対しペルチェ素子ヒートポンプによる熱移動を利用したヒーターでは、放熱される熱量がジュール熱と、大気の熱量(環境温度が0℃以下の場合でも大気から熱を吸収)との総和となるため、COP100%超を実現できる。つまり、抵抗式ヒーターに比べて小さな電気で大きな加熱ができ、EV用バッテリーの電力消費を大きく削減でき、EVの航続距離延長に寄与することが可能となる。

 ペルチェ素子を用いた自動車車室内の暖房および冷房(キャビンヒーターおよびキャビンクーラー)は軽量・コンパクトで済むため、冷暖房のない超小型EVなどで快適な車室空間を実現できるとして、OEMでの検討が進んでいる。

バッテリーおよびキャビンの温度コントロールのモックアップ

◆ADAS向けCMOSイメージセンサ用クーラー
 先進運転支援システム(ADAS)では、全周囲の距離や画像認識を行い、死角を少なくして安全性を確保するために、1台当たり20個程度のカメラが搭載されると予測され、その機能を担うCMOSイメージセンサ (相補性金属酸化膜半導体を用いた固体撮像素子)の市場拡大が見込まれている。

 このセンサは熱に敏感で、熱によって引き起こされるダークショットノイズ(暗電流)は、発熱量とともに増大して画像の精細さを欠く結果となる。これに対して車載カメラのCMOSイメージセンサに冷却用ペルチェ素子を装着することで高精細な画像を得ることを可能にしている。OEMでの具体的な検討が始まってきている。

CMOSイメージセンサ用クーラー

自動車での磁性流体の適用とメリット

 磁性流体は、流体でありながら外部磁場によって磁性を帯び、磁石に吸い寄せられる機能性材料で、磁性微粒子、界面活性剤、キャリアとなるベース液(潤滑油)からなる。直径約10nmの極小の酸化鉄粒子が、凝集を防ぐ界面活性剤で被膜され、安定的に分散したコロイド状の液体となっている。

 自動車分野ではすでに磁性流体の放熱効果やダンピング効果などによる高音質化や小型化などからスピーカーに採用されているが、今回の展示会でフェローテックは、以下のような新提案を行った。

磁性流体の新提案と現状について語る廣田 氏

◆振動制御用磁性流体
 欧米においては、足回りの振動を抑制する「アクティブダンパー」に磁気粘性流体(MRF)が採用された実績があるが、粒子が均一に分散せずに沈殿してしまう、磁気応答性が良くないといった課題がある。これに対し同社では、磁気応答性や印加磁場によるせん断力(粘性)変化、分散性、潤滑・摩耗特性などで優位性のある「MCF(Magnetic Compound Fluid:磁気混合流体)」を開発し、アクティブダンパーへの応用を提案している。

 新開発のMCFは、磁性流体よりも大きい磁性粒子を主成分とすることで、印加磁場によって磁性粒子の配列を制御し、アクティブダンパーや様々な振動吸収に適用できる。市場にあるMRFはおしなべて粒子が均一に分散せず沈殿してしまう。これに対し、新開発のMCFは分散性が良好で1ヵ月以上経過しても沈殿することがない。

 自動車には足回りの振動やエンジン回りの振動のほか、あらゆる振動系が組み込まれている。たとえば車室内における振動・騒音などを解消できれば、ドライバーの快適性を実現できる。同社ではMCFの優れた分散性と耐摩耗性能で差別化を図り、採用を促していく考えだ。

MCFを封入したアクティブダンパーのデモ機

MCFの優位性の例:良好な分散性

◆磁性流体コンポジット材料
 直径約10nmの磁性流体をベースとして、高い周波数領域でも磁気応答性が優れ磁気ヒステリシスが極めてゼロに近い磁性コア材料「Hzero®コンポジット」は、各種樹脂材料に磁性流体を均一に分散させて練り込むことで、ゴムやゲル、スポンジ材料、接着剤のような液体といった形で提供できる。たとえばゴム状にしたものでは静音性を高めるのに効果があると見られる。新開発のMCFを分散させたHzero®コンポジットであれば、制振ダンパーとしても利用できる。自動車部品メーカーや先進開発のOEMなどが興味を示している。

◆感温性磁性流体を用いた熱輸送システム
 EVではバッテリーなど発熱を伴う機器の冷却が重要だが、ループ循環系の熱輸送システムを構築するには一般的に流体を循環させるためのポンプなど機械的駆動力が必要となり、バッテリーを消費させることになる。

 これに対しフェローテックでは、温度に反応して磁化が大きく変化する「感温性磁性流体」を用いたループ状の流路を持つ熱輸送システムを提案している。感温性磁性流体を用いた熱輸送システムでは、流路の高温側と低温側の間に磁石を設置。ペルチェ素子で加熱された磁性流体は温度上昇に伴い磁化の大きさが減少し磁石にあまり反応しないが、低温側の磁性流体では磁化の大きさが上昇し、磁石に強く引き寄せられる。これによって低温側から高温側へと、感温度磁性流体の流れ(駆動力)が発生し、この流れにより熱を輸送できる。

 つまり、機械的な動力なしに流体の自己循環が可能となる。採用には時間がかかると見込まれるが、自動車メーカーに訴求して部品メーカーでの適用を促していく考えだ。

感温性磁性流体を用いた熱輸送システムのデモ機

今後の展開

 フェローテックでは、上述したような技術の市場参入の難易度などを勘案して、短期(1~4年)、中期(2~6年)、長期(4~8年)の計画をもって提案を進めていく。

オートモーティブプロジェクトの短期~長期計画について語る二ノ瀬氏

 いずれも自動車分野で近い将来問題となる諸課題へのソリューションだと考えられるが、早い時期に提供が可能な技術から、時間をかけて実用的なものに仕上げていく必要がある技術までを、それぞれ時系列でプロットしている。

 短期的には実績のあるシートの温調としてのペルチェ素子やスピーカー向け磁性流体のビジネスを拡大するとともに、海外で実績のあるカップホルダーや、CMOSイメージセンサ用クーラーなど、技術としてイメージがしやすく検討が始まっている案件に向けて、ペルチェ素子をいかに作るかを考えていく。

 中期的には、超常磁性を有する固体材料Hzero®を磁性コアとした「高精度直流測定センサ」やヘッドアップディスプレイ(HUD)向けペルチェ素子などを、長期的にはキャビンやバッテリーの温調向けのペルチェ素子や、MCFを用いたダンパー、感温性磁性流体を用いた熱輸送システムなどを、その時々のユーザーニーズをとらえながら技術をブラッシュアップして、実用化していく意向だ。

 自動車分野では前述の技術課題のほか量産キャパシティーやコストなどへの対応が求められるが、フェローテックではペルチェ素子および磁性流体のNo.1サプライヤーとして量産やコストへの対応が可能と自負する。同社では今後の需要に対応できる体制を強化しつつ、一点集中ではなく、全方位にリソースを最適配分しつつ、各種技術課題を解決するための最適なソリューションを提供していく考えだ。

■フェローテックの製品をさらに知るには
http://www.ferrotec.jp/

■フェローテックホールディングスをさらに知るには
http://www.ferrotec.co.jp/

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協和界面科学、接触角や表面・界面張力など受託測定サービスを開始

4年 11ヶ月 ago
協和界面科学、接触角や表面・界面張力など受託測定サービスを開始コダマ 2019年5月9日(木曜日) in

 協和界面科学( https://www.face-kyowa.co.jp/ )は、自社が製造・販売する測定機器を用いて接触角、表面・界面張力、摩擦・摩耗解析、粘着・皮膜はく離解析、ゼータ電位、防曇性評価などの受託測定サービスを開始した。クレームの原因調査や測定データの提示を求められたりした場合など、一時的に各種測定結果の必要性が生じたケースに対応する。

 受託測定サービスは、同社の専任測定員が測定から報告まで対応。素材評価のための判定指標となる信頼性の高いデータを提供する。主な測定項目は以下のとおり。
・静的/動的/接触角(ぬれ性、撥液性、洗浄評価、表面自由エネルギー解析など)
・静的/動的表面・界面張力(浸透性、乳化性、溶けやすさ、ぬれやすさ、泡立ちなど)
・ラメラ長(泡沫安定性、塗膜のピックアップ性、液切れ性、ワキ性評価など)
・粉体ぬれ(粉体のぬれ性、粉体の表面処理・表面粗さによるぬれ性、粉体浸透速度による湿潤性評価など)
・静/動摩擦 摩耗解析(摩擦摩耗、潤滑性、ベタつき、滑り性など)
・引張試験(粘着、角度依存、軽はく離、高速はく離など)
・ゼータ電位(粒度分布,分散安定,凝集,沈降性など)
・防曇性評価(くもり度合,透け具合,結露など)

  また、受託測定サービスの詳細はこちらから確認できる。

 

コダマ

ジェイテクトと産総研、 スマートファクトリー連携研究ラボを設立

5年 ago
ジェイテクトと産総研、 スマートファクトリー連携研究ラボを設立kat 2019年4月25日(木曜日) in

 ジェイテクトは、産業技術総合研究所(産総研)と共同で、2019 年 6 月に、産総研 つくばセンター 東事業所(茨城県つくば市)内に冠ラボ「ジェイテクト-産総研 スマートファクトリー連携研究ラボ」を設立する。

須藤誠一 ジェイテクト会長(写真左)と中鉢良治 産総研理事長(右)

 産総研では、企業のニーズにより特化した研究開発を実施する目的でそのパートナー企業の名前を冠した連携研究ラボ(冠ラボ)を産総研内に設置する取組みを進めている。今回のジェイテクトの冠ラボは12番目となる。ジェイテクトからは研究者・研究資金を、産総研は研究者・研究設備・知的財産などの研究資源を提供し、ジェイテクトからの出向研究者10名程度と産総研からの研究者10名程度が、共同で研究開発に取り組む。

 研究テーマは「加工機 ・生産 ラインのスマート化 (知能化 、自律化 )およびその要素技術の研究開発」とし、サイバー・フィジカル・システム(CPS)による加工機の自律化技術の研究開発、生産ラインの自律的最適化を可能とするサイバー・フィジカル・プロダクション・システム(CPPS)の研究開発、さらに関連要素技術の融合により、次世代スマートファクトリーの実現を目指す。

 連携研究ラボ長はジェイテクト 研究開発本部 加工技術研究部の岩井英樹氏が、連携研究副ラボ長は産総研 製造技術研究部門の芦田 極氏が務める。

 地球環境への配慮、少子高齢化に伴う労働人口の減少など工場を取り巻く環境が変化する中で、もののインターネット化(IoT)やAI などの革新技術を利用した工場機器の知能化・自律化やビッグデータを高度に活用した効率的なスマートファクトリーの実現が求められている。

 こうした中、ジェイテクトの保有する生産技術ノウハウやユーザーへのIoE 技術の提供実績に基づく豊富なデータ、ノウハウに、産総研の高度なセンシング/データ・アナリティクス、モデルベース設計に関わる製造研究技術を融合することにより、知能化・自律化や高度なシステムインテグレーションの技術開発を加速し、先進的なスマートファクトリー・ソリューションの早期実現を図る。

 両者では今後、「加工機・生産ラインのスマート化(知能化、自律化)およびその要素技術の研究開発」を実施し、3~5 年後に実用化する予定。

 IoTによって実空間(フィジカル空間)上にあるものの情報が、コンピューター上(サイバー空間)に蓄積できるようになる。蓄積された情報をサイバー空間上で処理し、その結果をフィジカル空間上の問題解決や価値創出に利用しようとする概念およびその実装をサイバー・フィジカル・システム(CPS)という。両者では3年程度で、CPS による加工状態の見える化と加工条件の自律最適化を実現する工作機械の開発にめどをつける。

 さらに5年をめどに、CPS を備えた各工程をつなぎ、問題の可視化、分析、フィードバックを繰り返すことで不良と異常を削減するCPPS (CPSによる問題解決や価値創出を、工場での製造工程に適用する仕組み)の構築を目指す。

加工機のCPS とCPPS 生産ライン(イメージ)


加工機のCPS とCPPS 生産ライン(イメージ)

 須藤誠一 ジェイテクト会長は、「すでに当社では、オープンイノベーションで国内外の大学や研究機関の知見を活用しているが、数年前から中鉢良治 産総研理事長と話を進め、ステアリングや工作機械、軸受・駆動部品で培ってきた加工技術や生産技術を有する当社と、センシングやデータ・アナリティクス、モデルベース設計など高度な製造技術を保有する産総研が連携し、将来を見据えた先進的な生産ライン・加工システム、関連要素技術の共同研究開発に取り組むことを決めた。加工機・生産ラインの知能化、自律化を進め、さらに前工程、後工程を含めて連携させながら、次世代スマートファクトリーへと進化させていくためのCPS、CPPSの技術をともに開発していきたい」と語った。

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ジェイテクト、ステアリング事業でソフトウェア開発の体制を強化

5年 ago
ジェイテクト、ステアリング事業でソフトウェア開発の体制を強化kat 2019年4月21日(日曜日) in

 ジェイテクトは、自動運転対応などに向けた電動パワーステアリング(EPS)の電子関連部品の開発強化を目的に、本年4月に組織を改正した。新規性のある開発アイテムの増加などにより、ソフトウェア開発の一層の増員を計画している。

 同社のこれまでの自動車部品のソフトウェア開発拠点である花園事業場 技術開発センター(愛知県岡崎市)に加え、東刈谷事業場(愛知県刈谷市)でのソフトウェア開発の開始を本年夏から予定している。

 自動運転化対応、ステアバイワイヤなどの新規システムに対応するため、機能安全設計、冗長設計、サイバーセキュリティ対応など、EPSの技術ニーズはより高度化し、ユーザーにそのニーズは多様化してきている。

 これを受けてジェイテクトでは本年4月、EPSのソフトウェア開発組織の見直しを行い、モデルベース開発、AUTOSAR対応などに基づくEPS固有の組み込みソフトウェアを開発する新規部署を増設した。ソフトウェアのシステム要求から単体設計・評価、システム評価に至るまでのV字プロセスを一気通貫で集約して開発を実施する。

 また2019年度以降100名規模の増員を計画しており、開発拠点の拡張が必要となり、花園事業場に加え、本年夏からは東刈谷事業場を新たなソフトウェア開発拠点とすることを計画している。

 今回の拠点拡張により、自動運転対応技術開発、MCU内製化などを進め、一層の商品力強化を推進していく。加えて各職場の働く環境の改善を進め、社員のモチベーション向上と生産性を高め、創造性を高める職場づくりと働き方改革を推進していく。

 EPSのソフトウェア開発の人員は、2019年以降100名規模の増員を予定しており、花園事業場、東刈谷事業場、グループ会社のジェイテクトIT開発センター秋田、それぞれの拠点でユーザーのニーズに応えるソフトウェア開発を行っていく。

 また、欧州、中国、インドなどの海外の開発拠点のグローバルマネージメントや新会社J-QuAD DYINAMICSとの連携により、自動運転社会に対応するステアリングシステムを開発していく。

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やわらか3D共創コンソーシアム、1周年記念シンポジウムを開催

5年 ago
やわらか3D共創コンソーシアム、1周年記念シンポジウムを開催コダマ 2019年4月12日(金曜日) in

 やわらか3D共創コンソーシアム(会長:古川英光 山形大学教授)は4月5日、東京都港区のキャンパス・イノベーションセンター東京で、同コンソーシアム設立1周年を記念してシンポジウムを開催した。

 冒頭、ビデオレターで開会挨拶を行った山形大学 小山清人学長は「この1年で古川教授のアイディアに対して大変多くの企業が賛同し、参画していただいている。多くの企業が3Dプリンターのプロジェクトに興味を持っていただいていることは、山形大学にとっても非常にありがたいことだと思っている。山形大学としても3Dプリンター関連の研究を支援してく所存である。また、国からも評価されておりJST(科学技術振興機構)などを通して支援していただいている。さらに、一般の方々にも関心が高い。コンソーシアムがより良い成果を上げて一般の社会に実装していただけるように希望している。また、世界に抜きん出た研究成果を期待している」と述べた。
ビデオレターで挨拶をする小山氏

 続いて、来賓挨拶として日立製作所 研究開発グループ 技師長の佐々木直哉氏(元SIP革新的設計生産技術担当 プログラムディレクター)が「2014年に内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)が開始して、その1テーマとして古川先生のデザイナブルゲルが採択され、様々な成果を出してきた。SIPは従来の国のプロジェクトと違い、実用化・事業化が求められる。厳しい審査の中、最終的には12テーマが採択され、3Dゲルプリンターという代表的な成果として上がってきた。SIPの特徴は国プロの枠を超えて様々な企業と交流・連携をしていくことにある。これから国のプロジェクトのやり方も変わっていくと思っているが、基本的にはプロトタイピングを色々な方に使っていただいて成果を出していくのが大事なのではないかと考えている。その代表的な例として、やわらか3D共創コンソーシアムが始まったと理解していただきたい。コンソーシアムが基本的な技術のつながりだけでなく、ものづくりや製品につながるような活動を期待している」と来賓挨拶を述べた後、以下のとおり講演が行われた。
来賓挨拶をする佐々木氏

・「やわらか3Dで目指すシンギュラリティ」古川英光氏(山形大学 教授)…同コンソーシアムの設立からこれまでを振り返り、マジョット・ヘディ氏のデザインによるロゴマーク策定の経緯や昨年4月に開催されたキックオフシンポジウムについて、古川氏の発案で7月5日~6日に山形で行われた「第1回合同部会~15年後の3Dプリンティングビジネスを共創しよう~」と題したワークショップについて紹介した。また、造形したものから動く物体をつくるという概念の4Dをロボットやセンサーに活用する流れにあることを受けて、2018年8月に米沢で開催した「第1回4Dマテリアル&システム国際会議(4DMS)」で同コンソーシアムのメンバーが発表したことを報告、3Dや4Dといった概念の学術研究が盛り上がりを見せていると解説した。さらに、同コンソーシアムの取組みとして昨年11月に行われた「やわらかものづくり研究会」を紹介、インダストリー4.0の変遷や3Dチョコレートのつくり方、3D技術による歯科医療の変化などについての発表があったことを報告した。今後のコンソーシアムの活動としては、「食品、医療、ゲル、モビリティ、ロボットの五つの部会活動の中に、自身が所属する山形大学 ソフト&ウェットマター工学研究室が取り組んでいる様々なプロジェクトを連携させてオープンイノベーションを進めていきたい」と展望を語った。
講演をする古川氏

・「青の錬金術師」塚本雅裕氏(大阪大学 教授)…ジェットエンジンのタービンブレードや切削工具、鉄鋼ロールなどの金属製品に対して耐摩耗、耐食・防錆、耐衝撃、硬度向上などの表面特性を付与する技術として、高品質・高機能・高密度および低熱影響で実現するレーザーコーティング技術について紹介した。同技術は、ヘッド中心から原料粉末を噴射し、そこに複数のレーザー光を照射することで溶融凝固して皮膜を形成するプロセス。講演では、中心から噴射する原料紛体を複数のレーザー光で加熱し、被膜を加工することで溶融池を作らずに被膜をつくることができると解説。溶融池を作らないため、母材への熱影響が少なく皮膜の希釈率も低くすることができ、皮膜が薄く高品質な膜を形成することができるという。このプロセスで使用するマルチレーザーの加工ヘッドをヤマザキマザックの工作機械に提供し、2016年に製品化されたという。また、中小企業向けに小型の加工装置を開発し、ドリル刃先やギヤなどの微細部分の補修を高精度に行えることなどを紹介した。
講演をする塚本氏

 講演終了後は古川氏をファシリテーターとして、佐々木氏、塚本氏、田中浩也氏(慶應義塾大学区SFC 研究所 所長/環境情報学部 教授)、榊 良祐氏(dentsu/OPENMEALS founder)、中谷光男氏(MAKErs SENSE 代表)、川上 勝氏(山形大学大学院理工学研究科 機械システム工学専攻 プロジェクト准教授)をパネリストに「やわらか3Dで〝もの〟シンギュラリティを起こすには」をテーマにパネルディスカッションが開催された。
パネルディスカッションのもよう
参加者一同

コダマ

第1回ソフトロボット創世シンポジウムが開催

5年 1ヶ月 ago
第1回ソフトロボット創世シンポジウムが開催kat 2019年3月20日(水曜日) in

 「第1回ソフトロボット創世シンポジウム」が3月20日、東京都千代田区のTKPガーデンシティPREMIUM神保町で開催された。同シンポジウムは、科研費新学術領域「ソフトロボット学」と山形大学OPERA「ソフトマターロボティクスコンソーシアム」の合同企画によるもの。

開催のもよう

 当日はまず、開会の挨拶に立った山形大学OPERA領域統括代理の高橋辰宏氏が「ソフトマターロボティクスコンソーシアムの活動とロボット学の活動とは、オーバーラップする部分としない部分があり、相補的な関係にあると思う。本日参加された各位のアイデア・ひらめきも反映しつつ新しい概念・新しい領域をつくっていければと思う」と述べた。

高橋辰宏氏

 続いて、来賓挨拶に立った科学技術振興機構(JST)調査役の伊藤哲也氏が「ソフトマターロボティクスコンソーシアムのこれまでの研究成果を今後活動が本格化するソフトロボット学の先生方に活用いただくとともに、前者もまた後者の研究成果を活用するといった、双方の良い相乗効果に期待したい」と語った。

伊藤哲也氏

 その後、以下のとおり講演がなされた。

・基調講演「ソフトロボット学がめざすもの」鈴森康一氏(東京工業大学)…生体システムのもつ「やわらかさ」に注目して生体システムの価値観に基づいた自律する人工物を創造する新学術領域「ソフトロボット学」の概要について説明。「いい加減」を許容・活用し、「好い加減(E-kagen)」に仕事を行えるE-kagen科学技術という新しい価値観を体現するソフトロボット学について、自身の研究事例をまじえて紹介。今後、学術展開としてはソフト人工物学会の創成やE-kagen科学技術の確立・発展などを目指し、社会展開としては赤子をやさしく抱擁するロボットといった介護・人間共存、さらには人にぶつかっても車のボディーが変形して人を包み込んで怪我させることがないといったソフト人工物の開発につなげたいとの構想を掲げた。

鈴森康一氏

・研究発表①「やわらかいロボット」新山龍馬氏(東京大学)…やわらかさと硬さを持たせた筋骨格ロボットや昆虫規範ロボットといった研究から、生物に迫り生物を超える新学術領域「ロボット学」への取組み、高分子フィルムで創るパウチモータなど印刷できるロボットの研究などを紹介した。

・研究発表②「Physical reservoir computing for soft machines」中嶋浩平氏(東京大学)…制御系なしに複雑なダイナミクスを設計・操作できるReservoir Computingについて説明。非線形、メモリーが利点となるReservoir Computingのソフトロボティクスへの活用研究について紹介した。

・研究発表③「超柔軟素材を用いた分岐・伸展トーラス機構を基軸とするロボット駆動体の設計と具現化」多田隈建二郎氏(東北大学)…ロボットが3Dゲルプリンターにより形状記憶機能を持つ構造を自由に成形するコア技術に基づき、自由位置で自由な方向に分岐・分裂が可能な膨張式の枝分かれロボット機構を実装するための設計論・具現化手法の確立を目指す取組みを紹介した。

・研究発表④「ソフトマターロボティクスと社会実装」古川英光氏(山形大学)…ソフト機能材料・デバイス、ソフトセンシング、ソフトメカニクス、ソフト蓄電デバイスという基盤技術の構築によってロボット分野で人・モノ・情報・人工知能を優しくつなぐ新領域ソフトマターロボティクスの取組みについて紹介。ゲルという最先端材料を誰でも希望する形に短時間でつくれる3Dゲルプリンターを用いたクラゲロボットの開発など、自身の研究を紹介。今後の社会実装の例としては例えば、深海のクラゲをくわえ込んで捕らえる生物模倣ドローンの開発などを目指したいとした。

・研究発表⑤「ソフトセンシング技術とソフトロボティクスへの応用」時任静士氏(山形大学)…垂直圧力やせん断応力、温度などを検出できるマルチセンサを組み込んだPDMS製ソフトハンドを作製。把持力1Nでは検出されたスティックスリップによるすべりが、同3Nでは検出されなくなることなどを示した。そのほか、全方向インクジェット(OIJ)法を用いたソフトマター(PDMS)表面への歪みセンサ形成の話題などを紹介した。

 その後、古川英光氏がモデレーターを務め、鈴森康一氏、新山龍馬氏、中嶋浩平氏、多田隈建二郎氏、時任静士氏、山口昌樹氏(山形大学)、重田雄基氏(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)をパネリストにパネルディスカッションが行われた。

 パネルディスカッションの途中には、重田氏の「ソフトマターロボティクス関連市場」と題するショートプレゼンテーションがなされ、市場として物流用途が有望視されていること、人と融和するソフトマターロボティクスの市場も期待されていること、性能がアップデート可能なソフトマターロボティクスを考える際の、デジタル上で把握しうるソフトマターの耐久性など、ハードウェアとしてのビジネスモデルを念頭に置いて議論を進める必要があることなどが紹介。

 やわらかいロボットの価値・差別化を一般の人にも示せるようなキーワードについて、議論がなされた。やわらかさゆえの当たっても痛くないといった「安全性」(ただし出力を上げると弾性エネルギーがある分かえって危険)、「人・生き物とのインターフェース」、接触してなじませることのできる「自由度の多さ」、「人に備わっていない機能を付加できる可能性」、外観・デザインの自由度の「やわらかい和ませるイメージを付与できる可能性」など、多様な意見が出された。

 パネルディスカッションの総括として、ソフトロボット学を代表して鈴森氏が「ロボットはインテグレーションであり、特に新しい機能性材料を欲している。材料技術とともに、世界トップの研究を目指したい」と述べ、ソフトマターロボティクスコンソーシアムを代表して時任氏が「材料が表舞台に出る時代が来たらうれしい。日本の材料メーカーは新材料開発の点で優秀でフレキシビリティを有しているので、要求が提示されればそれに応える材料を作る能力は充分ある」と述べた。

 また、閉会の挨拶に立った古川英光氏は、「ソフトマターロボティクスコンソーシアムはあと2年で終了するが、5年間活動を継続する新学術領域「ソフトロボット学」へとバトンタッチでき、ソフトロボットの材料を供給して使ってもらえる、いい流れができている。本シンポジウムが新しいソフトロボットによる創世につながることを期待したい」と語った。さらに、第2回ソフトロボット創世シンポジウムが9月12日(木)に山形大学工学部(山形県米沢市)で開催される予定であることがアナウンスされた

古川英光氏

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ジェイテクトの歯車式LSDがルノーのメガーヌ R.S. カップに搭載

5年 1ヶ月 ago
ジェイテクトの歯車式LSDがルノーのメガーヌ R.S. カップに搭載kat 2019年3月1日(金曜日) in

 ジェイテクトが生産する歯車式LSD(リミテッドスリップデフ)TORSEN(トルセン) Type-Bの新設計品が、本年3月22日に発売予定のルノー「メガーヌ R.S. カップ」に搭載される。同駆動製品技術によって車両の旋回性と安全性の向上につながることが評価されたもの。

製品イメージ

搭載車両「メガーヌ R.S. カップ」

 トルセンとは、自動車の旋回時に左右輪もしくは前後輪のトルクを最適配分する駆動装置LSDの一種で、ヘリカルギヤを用いて差動制限を行うLSDとして高いトルク配分性能と高耐久性を誇る、ジェイテクトの独自製品の一つ。

 現在では主に四輪駆動車に搭載され、前後輪のトルク配分を行うTORSEN Type-Cとスポーツタイプの後輪駆動車をはじめ前輪駆動車にも搭載され主に左右輪のトルク配分を行うTORSEN Type-Bを、日本、ベルギー、アメリカで生産している。

 従前のTORSEN Type-Bにはサイドギヤを分割し、結合部にヘリカルスプラインを採用して左右輪のトルク配分比を高め、トラクション性や走行時のフィーリングを向上する高性能な仕様の製品があるが、今回、「メガーヌ R.S. カップ」に搭載が決まった新設計品は、さらにヘリカルスプラインをワンウェイ構造とすることで、アクセルオンの時は差動制御が大きく機能しトルク配分比を大きく高める一方で、アクセルオフでは差動制御の効きを抑えることを実現、搭載車両の特徴に則した最適なトルク配分とドライバビリティの向上を実現した。

製品の構造

 日本と欧州と共同で設計し、ベルギーの生産拠点(JTEKT TORSEN EUROPE)で生産する。

 新設計品の特長は以下のとおり。

・ヘリカルギヤを使い低いトルク分配性能にも対応出来るトルセンLSD

・オープンデフにはできない瞬時に路面に応じたトルク分配が可能

・トルセン本来の応答性の良さを生かしながら、フロントデフからリヤデフまで幅広く適応可能な性能を持ち、様々な用途に対応するマルチパーパスモデル

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内閣府 やわらか3Dものづくりアイデアソン、優秀賞表彰式が開催

5年 2ヶ月 ago
内閣府 やわらか3Dものづくりアイデアソン、優秀賞表彰式が開催kat 2019年2月26日(火曜日) in

 内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)革新的設計生産技術」やわらか3Dものづくりアイデアソン(特定のテーマについて多様性のあるメンバーが集まり、対話を通じて新たなアイデアの創出やビジネスモデルなどの構築を図る形式のワークショップ)西日本大会および東日本大会の各優秀賞の表彰式が1月30日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「nano tech 2019 第18回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」内で執り行われた。

佐々木直哉PDと受賞者一同

 SIP革新的設計生産技術(平成26〜30年度)は、Society5.0(超スマート社会)を実現するものづくりとして、社会に新たな価値を創出する「デライトなものづくり」を旗印に、従来にない新機能・高性能を実現するイノベーションに取り組んでいる。3Dやわらかアイデアソンは、新たに開発、実用化されたやわらか素材(ゲル、ラバー)の3Dプリンティング技術活用を目指し、2018年度に西日本大会が昨年11月23日に立命館大学 大阪いばらきキャンパスで、東日本大会が昨年12月9日に山形大学 米沢キャンパスで開催された。

 3Dやわらかアイデアソンはそれぞれ、ゲル、ラバーの3Dプリンティング技術を使った「デライトなコトづくり」をターゲットに、西日本大会では「40代以上のおじさまに楽しい生活を」をテーマに、東日本大会では「雪:冬を楽しむ新たな方法」をテーマに、参加者が、3D造形を用いた、ラバー単体、ゲル単体、ラバー/ゲルの融合・組み合わせ、のいずれかによって自由にアイデアを出し合い、チームとしてのビジネスモデルを提案した。

本年1月30日に東京ビッグサイト「nano tech 2019 第18回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」メインシアターで開催された「内閣府SIP革新的設計生産技術やわらか3Dアイデアソン表彰式」では、各大会で選出された優秀賞の表彰式が行われた。

 総評を述べたSIP革新的設計生産技術担当 プログラムディレクター(PD)の佐々木直哉氏は、「多くのユニークなアイデアが出たが独自性、有用性、実現性の三つの視点で評価して各大会の受賞作を決めた。これまでにない、やわらかい材料の3D造形ができ上ったことで新しいアイデアの視点を生み出せることを経験することができた。当日は高校生から一般の方まで幅広い世代に集まっていただいた。ものづくりへの関心が高まり、SIPの成果が普及展開されていくことを期待する」と語った。

西日本大会 優秀賞:岩本雅弘 氏、長島可奈 氏、玉田レオン 氏
・タイトル:「マッサージスーツ、ゲルつまみ」
・概要:形状記憶マッサージスーツでツボ押し、カロリーオフのゲルつまみ、形状記憶の形態ゲルコップ
・寸評:ゲルの形状記憶機能を活かして「あったらいいな」と思わせるアイデアであり、特に有用性、実現性が高い

西日本大会 優秀賞受賞式のようす

東日本大会 優秀賞:齋藤 薫 氏、長岡雄一郎 氏、豊田 覚 氏、五十嵐稀羅 氏
・タイトル:「毎日を簡単に楽しむday light(ディライト システム)」
・概要:圧電加熱融雪シート、窓ゲル、屋根ラバーで融雪、自分の手形のスコップグリップ
・寸評:奇抜かつ他要素技術も併用したアイデアであり、独自性、有用性、実現性とも高い

東日本大会 優秀賞受賞式のようす

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エボニック、2021年稼働ポリアミド12複合製造施設の建設を推進

5年 2ヶ月 ago
エボニック、2021年稼働ポリアミド12複合製造施設の建設を推進kat 2019年2月14日(木曜日) in

 独エボニック社は、新しいポリアミド12(PA12)複合製造施設を建設するための基本エンジニアリングを計画通り昨年末に完了し、プロジェクト実施フェーズに突入した。同製造施設は2021年の上半期に稼働する予定。

 同社はドイツにおいてこれまでで最大規模である約4億ユーロを投資し、ポリアミド12の総生産能力を50%以上増強する。増設されるポリマーおよびその前駆体の製造設備は、ノルトライン=ヴェストファーレン州のマール・ケミカルパークに建設され、既存のポリアミド12製造プラントを補完することとなる。

 エボニックのハイパフォーマンスポリマー事業部の責任者であるラルフ デュッセル博士は、以下のとおり語っている。「このプロジェクトは特別な挑戦。エボニックのエンジニアリング部門では約80人の技術者がこのプロジェクトに取り組んでいるほか、各サブプロジェクトに細やかに対応するため世界規模の著名な技術サービスプロバイダーと契約した。建設現場は現在稼働している工場のすぐ近くに位置しており、特別な安全基準が伴うため、建設中のエリアに加えて、建設用コンテナー、材料倉庫、事前組立のために、それぞれ充分なスペースを確保しておかなければならない。マール・ケミカルパークは、この厳しい基準にも対応している。新工場の稼働後には、50年以上の歴史を持つ既存設備とともに、製品供給に貢献していく」と。

 ポリアミド12は耐久性があり、金属部品よりもメンテナンス頻度が少なく、軽量化に貢献できることから、自動車産業、原油およびガスパイプライン、3Dプリンティングなどの有力な成長市場において幅広く使われている(日本国内ではダイセル・エボニックが供給)。エボニック社 リソースエフィシエンシー部門の責任者であるクラウス・レティッヒ博士は「この投資で分かるように、エボニックはスペシャルティケミカルへ引き続き注力していく。特殊用途に使われる高機能樹脂ポリアミド12は、エボニックの注力分野の一つであるスマートマテリアルの成長エンジンという、重要な面を担っている。加えてポリアミド12から製造される製品は、エネルギー効率において非常に優れている」と述べている。

ポリアミド12およびその前駆体を製造するための追加の設備は、ノルトライン

kat